2013/07/24

[AMoAd] ウェブ・アプリ横断リターゲティング提供開始

■元記事
AMoAdが、国内初 ウェブとアプリを横断したスマートフォン向けリターゲティング広告を提供

■要約
サイバーエージェントとDeNAの子会社で、スマートフォン向けアドネットワークを運営するAMoAdが、国内で初めてウェブとアプリを横断したリターゲティング広告プロモーションを可能にした。

■解説
今後のスマホアドネットワークを考える上で注目すべきニュース。

これまでスマホでプロモーションを行なう際、例えユーザーが同じ端末を使っていたとしても、技術的にウェブとアプリを横断してトラッキングを行なうことは困難だった。
「端末に固有で、ウェブとアプリの両方から取得可能で、複数のアプリで使用することが出来、さらにプライバシー上問題のないID」というものがこれまで事実上存在しなかったからだ。

(技術的に詳細な解説はこちらの記事を参照)

AMoAdの発表によると、"このたび独自のマッチングエンジンを活用することで"可能になったということだ。
どのような技術を使っているのか、非常に興味がある。

アプリ・ウェブを横断したリターゲティングが出てくると、何が起こるのか?

まず考えられるのは、アプリ面・ウェブ面の広告主が共通化され、それぞれ広告のバラエティが格段に広がること。
その結果として、媒体社の収益性が向上することである。

広告主側の現状を見てみると、ランディングページ・成果発生地点がウェブにある広告主は、アプリ面に対してはほとんど出稿していないと言える。
ウェブ面に限っては利用可能なターゲティング手法 (リマーケ・リターゲを含む) がアプリ面では利用できないことから、獲得効率が悪くなってしまうからだ。
仮にアプリ面に出稿した場合も、効率の悪さから、ウェブ面と比べてCPCを低く抑えて出稿するのが一般的だろう。

したがってアプリ面に配信される広告は、その多くが別のアプリのダウンロードを促進する広告か、アプリユーザーと相性の良い電子書籍 (マンガ) 関連のものが多かった。
これらのユーザーのLTVは、ウェブに出稿しているクライアントのものよりも一般的に低い (数百〜数千円。ウェブのクライアントだとCPA予算が万単位になるような業種もある) 。
すると当然の帰結として、媒体視点での収益性はウェブよりアプリのほうが低くなる (ウェブだとRPM 100〜200円台は十分実現可能だが、アプリアドネットワークのRPMは平均すると数十円程度) 。

ウェブ・アプリを横断したリターゲが出来るようになると、ウェブの広告主がアプリに出稿しない理由が1つ減る。
最終CVだけで見た獲得効率がどうなるかは不明だが、少なくともアプリ面に出稿して潜在顧客リスト (端末ID) を集めることが可能になるからだ。
逆に、ウェブで集めた端末IDに対してターゲティングし、アプリ面に広告を配信することも勿論できる。

要するに、ウェブかアプリかという垣根が広告主観点からは無くなっていき、媒体社の収益性についてもウェブとアプリが近づいていくという動きが期待できるのだ。

そうなってくると、ウェブと同様にアプリでも「どの媒体面に出すか」 よりも「誰に出すか」、つまりクライアントのターゲットとするユーザーに限定して広告を配信できるかというのがより重要になってくる。
スマートフォンはPCと比べても「個人」との繋がりが強いため、端末IDとユーザーのデモグラ・趣味趣向をデータとして持っている会社が伸びてくるかもしれない。
プライバシーについての議論がまた再燃しそうだ。

個人的に、アプリ開発者が非常に良いコンテンツを作っているにも関わらず、アプリだという理由だけでウェブよりも収益性が低いというのは、健全では無いと思っていたので、諸々議論すべき点があることは承知しつつもこの流れは歓迎したい。

AMoAdが、グレーな方法で技術的解決を図ったわけではないことを願う。
(もしそうだとしたら、判明した後にこの流れが減速することも考えられるので)

ぶた